PCR検査費用について

新型コロナウイルスの感染が各地で増え続けています。顧問先様・関係者の皆様におかれましては、感染されないことが最も望ましいですが、PCR検査については、受ける機会がないとも限りません。10月23日には国税庁が医療費控除の取り扱いについて見解を発表しました。ここで分かりやすくまとめてみたいと思います。


<現行の検査費用の負担について>

これは税理士の業務の範疇の話しではありませんが、3月より保険適用となっていますので、他の診療費用と同様に、3割自己負担+7割健康保険負担、が基本となります。

そこから次の場合に応じて、その3割の自己負担分が変わります。

  • 医師により感染が疑わしいと判断された場合

 → 3割の自己負担分が公費負担となり、実質的に負担はない事になります。

  • 無症状で医師により保険診療適応外と判断された場合(就業状況や海外渡航歴、その他の事情により自ら検査を受けた場合)

 → 自費診療となり全額自己負担となります。

さて、以上の点から、医療費控除についての取り扱いを確認しますと、


<個人の確定申告の医療費控除の取り扱い>

  • 医師の判断による場合

 → 医療費控除の対象となります。但し自己負担部分に限り、公費負担分は対象とはなりません。とあります。

ここで疑問が生じますが、医師の判断による場合では、先に見てきた通り、3割は公費負担となるのですが、自己負担となる場合とはどの様な場合なのでしょうか? 法人(の従業員)は健康保険が強制加入ですから、個人事業者で国民健康保険に加入しておらず(或いは高額のため払えておらず)検査費用の全額が自己負担となる場合、の事を指すのでしょう。これはレアケースと言えます。

明記はされていませんが、自己負担がなかった場合でも、医師の判断による場合の病院への交通費は、対象と出来るものと解釈出来るように思います。

  • 自己の判断による場合

 → 全額が自己負担となるのですが、単に感染していないことを明らかにする目的で受ける場合は、医療費控除の対象とはなりません。とあります。医療費控除の予防接種の要件と同様に、その後陽性が判明し引き続き治療を行った場合には、治療に先立つ診療として対象となります。

医師の判断により受ける場合はかなりひっ迫した状況ですから、どちらかと言うと自己の判断で受けるケースの方が多いかもしれませんし、むしろその様な場合を望みますが、医療費控除の対象とはならないという事です。


なお、関連する費用の取り扱いも示されています。

[マスク購入費用]

 → 予防目的は医療費控除の対象とはなりません。健康維持を目的とするビタミン剤なども対象とはなりません。とあります。

[オンライン診療]

 → オンライン診療料・オンラインシステム利用料は医療費控除の対象となります。


<法人が負担した場合の取り扱い>

では、会社の仕事の中で、クラスターに巻き込まれたり、感染者との接触があったと判断し、従業員に受けさせる場合ですが、従業員が自らの判断で受けた場合に該当するため、自費診療で全額自己負担となり、それを会社が負担する形になります。従って従業員の負担はないため、個人の確定申告とは関係がありません。

従業員のPCR検査費用を会社が負担した場合は、「福利厚生費」として損金経理する事が可能です。但し、インフルエンザの予防接種のINFOでの記載と同様、規程を設ける事が望ましいでしょうし、一部の役員のみなど対象者を選定するような場合では否認されます。実際の検査費用を超える支出や休業手当等は、その者に対する給与として所得税が課税されますので、実額を病院に直接支払うのが良いでしょう。


そもそもですが、医療費控除は社会保障政策で対応すべきで、所得税の計算に持ち込むこと自体がおかしく、本来申告が完結している高齢者が、医療費控除の還付を受けるためだけに確定申告会場に詰めかけることとコストの点もあり、廃止すべきものと言えます。近畿税理士会も廃止の意見を提出しています。




北村税理士事務所

- 税理士 北村友和 -